アラスカ・マッキンリー山麓 現地時間 7:56 am
閑散としていて,人の気配がない.
歩く桜子.息が白い.
傍らを歩く,ガイド,マイク(スノーモービルの運転手).
桜子「ここにはどれくらい,人が住んでないの?」
マイク「3ヶ月前まで,ここは‘ユピック’の村だった」
桜子「‘ユピック’?」
マイク「君らが昔,‘エスキモー’と呼んでた民族の一部さ」
桜子「一部?」
マイク「今はイヌイットと呼んでるけど,本当はいろんな民族がいる」
桜子「で,その人たちは?」
マイク「…死んだ…」
歩みを止める桜子.
桜子「全員…?」
マイク「…47人…」
桜子「災害?」
マイク「いや…結局のところ,インフルエンザか何からしい.なんせ,老人ばかりの村だったから…ほんの3ヶ月前までは,この村は…生きていた」
桜子「(再び歩き始め)47人…」
二人の眼前に大きな窪地が現れる.
マイク「これが,村人達が護りつづけてきた,ユンマ遺跡」
桜子「ユンマ…」
窪地の一番深い部分.九郎ヶ岳と見紛うばかりの建築物.
桜子「この村の人の遺体は,どこに?」
マイク「…何? 発掘に来たんじゃないの?」
桜子「インフルエンザなんかじゃないわ…絶対…」
チベット高原・国境警備隊 現地時間 1:14 pm
雄介の拘置房の扉が開けられる。
警備兵A,雄介を手招きする。
警備兵A「お別れだ。北京へ行ってもらう」
× ×
トラックの荷台に,雄介ただ一人。手首には手錠。
揺れも激しく,土ぼこりもひどい。
町田市内 11:37 am
まわる赤色灯。
ジュラルミンの盾を手にした機動隊員。
サル種怪人が、老婦人を人質に、路上駐車の乗用車へ、ジリジリと近づく。
機動隊小隊長の元へ、機動隊員が駆け寄る。
機動隊員「狙撃班、配置完了しました」
小隊長「狙撃班には『発砲を許可する』と」
機動隊員「了解です」
小隊長、周囲のビルの屋上を見上げる。
ビルの屋上、複数の狙撃員が小銃を構え、待機している。
スコープ内の照星中央に映るサル種怪人。
狙撃員の耳に無線連絡。
無線連絡の声「発砲を許可する。なお、狙撃部位は、腰部を避け、人命第一に配慮されたし」
関西国際空港
ごった返すロビー。
国内外の観光客、スーツに身を包む男女。
中には,いかにも犯罪のにおいを感じさせる人物も点在する。
その中に、一条。オールバックにサングラス、レザースーツという姿である。
大阪・梅田
いつもと変わらぬ雑踏。
その中に立つ、ヴォ・ズゴゴ・ギ、人間体。
当然、気に止める者は誰もいない。
町田市内
大腿部から鮮血を流し、膝をつくサル種怪人。
よたよたと逃げる老婦人。
狙撃班、これを機に次々と銃弾を打ち込む。
背中や胸に鈍い弾着音が数回。
だが、最後の一発が、後頭部を貫くと、怪人は倒れ、動きが止まる。
盾を持った機動隊員、そろりそろりと、動かなくなった怪人に迫る。
機動隊員の一人が、うつ伏せの怪人を仰向けにする。
怪人の胸元から、こぼれおちる一万円紙幣。
機動隊員が、怪人の顎をつかんで引き上げる。
と、怪人の顔は仮面のように剥がれ、その下には血まみれの青年の顔。
機動隊員A「…模倣犯…か…」