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ねおさん

「もし黒金が映画で主役を張るなら…」という 大活躍話を書いてみました(やられるんだけど^^;)。
映画ならではの大スペクタクル巨編! って「起」と「結」がないんですが^^;

>>>前編「暗黒」

「覚悟」

一瞬の閃光――命中!
「がふッ!」
だが、地面に倒れたのは雄介であった。
キックが命中した瞬間、ダグバの拳がアークルを粉砕したのだ。
そして何事も無かったかのように、二つの封印エネルギーを消し去るダグバ。
「…うぐ…が…はあ、はあ、はあ…」
立ち上がることも出きず苦しむ雄介。
そこにさらにダグバの炎が雄介を襲う。
「ぐっ!…あグッ…はあ…はあ…はあ…ガハッ!…」
もう、戦うことも、逃げることもできない。
「どうしたの?」
白い青年が声をかけてくる。漆黒の闇と紅蓮の炎と銀色の雨を従えて。
「…もっと強くなって…もっと僕を笑顔にしてよ…」
白い青年はまだ何か語りかけてきたが、雄介はもうそれ以上聞くことは できなかった。
世界が、黒く、フェードアウトしてゆく…。


「気が付いたか、五代」
気が付くと雄介はベッドの上に寝かされていた。こうやって病院の天井を 見上げるのは何回目なんだろう…。
「椿さん、俺…」
体を起こそうとした瞬間、全身を激痛が走る。
「…動くなよ。いくら超人的な回復力を持つお前でも、今回ばかりは さすがに駄目かと思ったからな。…腕の一部は骨まで炭化していたほどだ」
雄介の周りを忙しそうに動き、怪我の具合を調べながら、手にした ボードに何かを書き込みながら、話し掛けてくる椿。
計器や点滴の様子をチェックして、書き込みを終わらせると「これで頼む」と、 手にしたボードを看護婦に渡す。
看護婦が部屋から出て行くと、椿はベッドの隣のおりたたみ椅子に腰掛け、 静かに目を閉じる。
疲れからか、目の下にくまの出来たその顔は、ひどくやつれているようだった。
「いくら睡眠薬や麻酔剤を使っても、お前の体の中の石が薬を無効にしてしまう からまいっちまう。まったく、人の親切心が分からん石だ」
椅子に大きくもたれて天井を見上げていた椿は、目を閉じたままニヤリと笑った。
「椿さん、今やつはどうなって…」
雄介が言葉を発した瞬間、椿は突然椅子から立ち上がり、雄介の顔を睨む。
目と目を合わせると、真剣な顔、低く重く強い口調で話しだした。
「…お前のことだ。今すぐにでも0号の所に駆けつけて、戦うつもりなんだ ろうが、それは俺が許さん!俺の許可が出るまで、この部屋から決して出るな。 いいな!!」
激しい声で椿はそう言うと、再び椅子にもたれて今度は静かに語りだした。
「と、言って素直に聞く奴ならば苦労はしないがな。…一条には黙っていろと 言われているが、どうせ何も知らないままで我慢できるようなお前じゃないだろう」
そう言った後、ふと何かを考えるように顔を俯かせると、そのままの姿勢で 自分に語りかけるようにつぶやく。
「…いや、今まで誰よりも戦いつづけてきたお前だ。真実を知る権利は他の 誰よりお前にあるだろう」
そう言って椿は黙って席を立つと、病室から出て行った。

ものの数分もしないうちに椿は何誌かの新聞を手にして戻ってきた。
雄介の枕元で鷲掴みに持った新聞を掲げる。
「これには確かに真実が書かれている。だが、それはお前にとって辛すぎる 真実だ。…それでも見るか?」
黙ってうなずく雄介。
椿は少し悲痛な表情を浮かべたが、それでもベッドの角度を調節して、 雄介の上半身をやさしく起こすと、ベッドに新聞の一面を何部も並べた。

『現れない4号。0号との戦いで死亡?』
『灼熱の地獄と化した被災地』
『神出鬼没の0号に警察打つ手なし』
『恐怖に怯える日本列島』
『政府ついに自衛隊の出動を要請か』
『死亡者ついに2万人に』



黙って新聞を見つめる雄介。その表情は変わらない。
椿は椅子に座ると、雄介の方を見ないで雨が降る窓の外を見つめ話し始めた。
「お前がここに運び込まれてから3日。やつは未だに破壊と殺戮を繰り返して いる。一条もがんばっているんだが、今度ばかりは相手が悪すぎる。死亡者の 数もすごいが、怪我人の数はそれ以上だ。うちもスタッフ総出で治療に当たって いるが、もうすでに医薬品が足りなくなりつつある。…それでもなんとかせにゃ ならんのだがな。…五代」
「はい」
「分かるか。今は医師の手が圧倒的に足りない。だが、いつかのお前がように また勝手に病院を抜け出すつもりならば、俺はこの部屋から一歩も出るわけには いかん。だから約束しろ。何があろうと、奴がどこで何をしようとも、あと 6日…いや5日この部屋で回復に専念すると。…そうすれば俺は他の怪我人の 治療に行くことができる。…約束できるか」
「はい。椿さん、約束します」
雄介の目をじっと見る椿。そしてベッドの位置を元に戻し、雄介を寝かせる。
「…俺はお前の言葉を信じる。だから今は何も考えず休め」
そう言って椿は病室の電気を消し、部屋から出ようとした時、雄介が声を かけてきた。
「――椿さん。『究極の闇』ってなんだと思いますか?」
「究極の闇…」
真っ暗な部屋の中、雨の音と雄介の声が静かに聞こえる。表情は分からない。
「…俺思ったんです。やつの目的は殺人や破壊やゲームでもないって。やつ の目的は――」
椿がごくりと喉を鳴らす。
「目的、は?」
…だが返事は無い。廊下からの光でシルエットを纏った雄介は、そのまま闇と 同化したかのようにピクリとも動かない。
「…また検診に来る」
椿は病室の扉を閉めて出て行った。

雄介の脳裏に新聞の見出しや、記事が蘇る。
雄介は、静かに泣いた。



「五代!お前もういいのか!?」
未確認生命体合同捜査本部の会議が終わった一条を待っていたのは雄介だった。
「はい、一条さん、椿さんからようやく退院許可が出ました!」
笑顔でサムズアップする雄介。
「そうか、それは良かった」
警視庁の廊下を肩を並べて歩き出す二人。
「それより一条さん、あの炎の中から助けていただいて、本当にありがとう ございました!」
「いや、当たり前の事だ。気にするな」
雄介はそれを聞くと、いたずらっ子のような笑顔になる。
「え?レスキュー隊員の人に拳銃突きつけて、装備丸ごと借りるのって 当たり前なんですか?椿さんから聞きましたよー」
一条は小声で「椿の奴め」と言った後、立ち止まって真顔になって雄介の顔を まじまじと見つめた。
「一条さん?」
「五代…君に常識をうんぬんされるとは思わなかった」
「…」
「…」

大笑いする二人を警察職員達が不思議そうに見ている。
だが二人を見る誰の口の端にも、久しぶりの笑顔が浮かんでいた。

警視庁の玄関に二人は来ていた。雨は次第に止みつつある。
「一条さん、自衛隊の出動が決まりましたね」
「…ああ、私が聞いた所だと、自衛隊の持つ全戦力を投入して、徹底的な 殲滅戦をやる覚悟らしい…」
「やつ…0号にはどんな火器も通用しませんよ」
「私も同意見だ…。だがここまで被害が大きくなってしまった以上、止むを得 まい…。勿論我々も対抗措置は取っているが、それが奴に対して有効かどうかは 未知数だ…」
それを聞いた雄介は、一条に答える。
「力に力で対抗しちゃあいけないんです。力はやがて暴力となり、そして 戦争になる…。戦いはエスカレートし続け、そうなればもう誰にも止められ ません。だから…一条さん、一緒に戦いましょう。だって…一条さんだけが俺を 止められる唯一のひとなんだから」
「五代…」
雄介は階段を下り、ビートチェイサーに跨ると玄関口に立つ一条に向かって叫んだ。
「あきらめちゃいけないんです!みんなが絶望して、夢や希望が消えてなくなる ことがやつの…0号の唯一つの目的なんですから!」
駆け出してくる一条。いつの間にか雨が止んでいる。
「五代!俺は…俺達はどうすればいい!」
「笑顔ですよ!とっても難しくて大変だけど、笑顔がやつへの唯一の武器 なんです!」
立ち尽くす一条。雄介はヘルメットをかぶり、エンジンをかける。
「じゃあ、俺行きます。みんなに冒険に行くって挨拶しなきゃ」
「あ、ああ」
しばらく無言で見つめ合う二人。
その時、雲の切れ間から日の光が差す。嬉しそうに太陽を見上げた雄介は、 バイクを発進させると、あっという間に走り去っていった。
雄介の姿が見えなくなっても一条はいつまでも立ち続けていた。
走り去る間際、最後に雄介が一条に言った言葉を、幾度も頭の中で繰り返しながら。

「一条さん…俺、なります」


(END)