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「もし黒金が映画で主役を張るなら…」という
大活躍話を書いてみました(やられるんだけど^^;)。
映画ならではの大スペクタクル巨編!
って「起」と「結」がないんですが^^;
「暗黒」
「それ」は突然訪れる。
時も場所も選ばず訪れる。
だが「それ」が訪れたならば、始まりは常に同じ。
悲鳴――。
男か女か、それとも子どもか。
人が燃える。
地面をのたうち回りながら、この世の物とは思えない叫びを上げつづけた
声は、やがて消える。
見る影も無く黒焦げになった焼死体から立ち上る陽炎の向こうに、白い青年が
立っている。
そして青年は幼児のようなあどけない笑顔を浮かべると、腕を上げる。
伸ばした腕の先にあるものが突然火を噴きだす。
車、木、家、犬、人。
「それ」は突然去る。
終わりは常に同じ。
言葉がしゃべれる数少ない生存者と、各県警から警視庁未確認生命体
合同捜査本部に届けられる鑑識の結果は、どれも全てが同じ報告であった。
「それ」の訪れた後には燃え盛る町が残り、そして幾百、幾千の命が失われる。
そして白い青年の行方は、用として分からない。
2001年1月×日。
この日の広島での死者の予想人数を合計すると、「それ」による被害者総数は
ついに1万人を超えた。
「五代!例の未確認が出た!場所は――」
「――はい!なんとかやつを食い止めますから、一条さん達は市民の
皆さんの避難をお願いします!」
昨晩から降り続く雨の中、雄介はビートチェイサーに跨ると赤の金の
クウガに変身して現場へと向かう。
近い。
今まではあまりにも現場が遠すぎたが、今回はビートチェイサーを最高速度で
走らせれば現場の街まで30分とかからずに着く。
街から逃げ出す車で渋滞する上り車線とは逆に、街へと続く下り車線は、
通る車など一台とない。赤い車体が、昼なお暗い銀色の
雨の中を切り裂きながらひたすら疾走する。
「!」
遠くに目的地が見えた時、雄介は言葉を失った。
重く暗い空から落ちる激しい雨の下、街が燃えていた。
灰色の景色、オレンジ色の街、そしてそれを覆う黒い煙。
雄介は限界までアクセルを振り絞り、街の中心に向かって進む。
最も激しい紅蓮の炎の中、やつはきっとそこにいる。
「五代。―――五代雄介聞こえるか!」
「は、はい、一条さん!避難は後どれくらいかかりますか!」
「残念だが、火勢が強すぎて現在消防隊員でも街なかに入ることが出来ない状況だ。
市民のパニックも広がる一方で完全に人手が足りない。それに街から外へ出る
道路のいたる所で事故が起きている。…まだしばらく避難は完了しそうに無い…。
五代、君は今――」
「――やつの目の前です」
全てが紅く染まった灼熱の炎の世界で、白い青年がにこやかに赤の金の戦士を
見ている。
だが、間違いない。あの時感じたプレッシャーと同じ物が青年の体から放出
されている。
「やあ」
プレッシャーはそのままに、青年は笑顔のまま語りかける。
「まずね、街から外に出る道を封鎖しちゃうんだ。そして街の周囲を取り囲む
ように火の手をあげるんだ。するとどうなると思う?」
青年はそう言うとあたりを見回す。
街から脱出できなかった人々や車が、青年の周囲であるいは燃え、あるいは
炭となり、あたりは異常な匂いで充満している。
雄介の足元に転がる無残な黒い骸、骸、骸…。
「でも、まだまだ来るよ。だってもうここしか逃げる場所がないんだもの」
指先まで黒く燃えた小さな死体の横に、熊のぬいぐるみが転がっていた。
「さあ、僕と一緒に楽しもうよ」
雄介にはすでに青年の言葉は聞こえていなかった。
雄介の心を、怒り、憎しみ、絶望が支配したその時、再び雄介の脳裏にあの
黒い戦士の幻影が現れる。
だがもういい。
あいつに怒りの拳を叩き込んで、今ここで殺してやる。
「そうだよ。そのまま共に究極の闇をもたらす存在になろうよ――」
雄介の心が、体が、次第に黒く、あの幻影と同じ禍禍しいものに変わりつつ
ある――。
その時、ビートチェイサーの無線機から一条の声が雄介に届いた。
「五代!周辺の警察からの応援が現着した!現時点で出来うる救出作業が
完了するまで後しばらく時間を稼いでくれ!」
「は、はい!分かりました!」
幻影と同じ姿になりつつあった雄介の体が、元の赤の金の戦士に戻る。
その姿を見た青年が、つまらなそうな表情をすると再び新たな目標に向かって
腕を伸ばす。車に乗っていた家族が、一斉に火を噴きだす。
「う、うおぉ!!」
雄介は絶叫して、道路から飛び出していた水道管を手にすると、ドラゴン
フォーム――いや、黒い水の戦士、ブラックドラゴンとなって青年に飛びかかる。
「うおおりゃあー!」
パイプが瞬時に変化して、黒くなったドラゴンロッドを青年に振り下ろした
瞬間、青年の姿が目前から消えた。
「!」
背後に気配を感じた瞬間、大きな力で吹っ飛ばされるブラックドラゴン。
「うぐっ!」
瓦礫の中からやっとの思いで立ち上がった雄介は、青年が白い悪魔へと変身した
姿を目にする。
これが…ダグバか…究極の闇をもたらす存在…。
だが考える余裕も無く、白い悪魔―ダグバの腕が雄介に向けられる。
すんでの所で炎から逃れたブラックドラゴンは、かわした姿勢からロッドを
地面に突き立て、棒高飛びの要領でダグバの背中を取ると、すかさずドラゴン
ロッドダグバの脇腹に打ち込む!
「何っ!」
脇腹に当てたと思った瞬間、ダグバは信じられないスピードでドラゴンロッドを
掴むと、瞬時に燃やし尽くしまった。
スピードで時間を稼ぐのは無理だと知った雄介は、すかさずダグバの肩を
踏み台にしてジャンプすると、そのまま地面を転がり、警官の死体が握っていた
拳銃を手にすると、ブラックペガサスへと超変身する。
黒いペガサスボウガンを引き絞ると、さらに研ぎ澄まされた神経でダグバを狙う。
狙うは手と足。
すかさず引き金を引くブラックペガサス!
だがダグバは両手を突き出し、自分の前面に炎の壁を作っていた。
ペガサスの矢は、ダグバに届くことなく、次々と炎の壁の前に消えてゆく。
ダグバは炎の壁越しに、ブラックペガサスのいる地点に炎を着火させた。
しかしそこに、すでに雄介の姿は無い。
雄介はペガサスボウガンを打ち尽くした時点で、結果を確認することなく、
黒いボウガンを捨て、ビートチェイサーに向かって走り出していた。
「うふふ…楽しいね…」
命をかけた戦いを、まるでゲームのように楽しむダグバ。
雄介はブラックタイタンとなり、ビートチェイサーからビートアクセラーを
引き抜くと、タイタンソードを黒く変化させた。
雨に濡れた黒い刀身が炎の照り返しを受けて鈍い光りをはなつ。
ダグバに向って歩き出すブラックタイタンの装甲に炎が当たる。
信じられないほどの熱さが雄介を襲う。
次々と命中する地獄の炎。
だが雄介は歩みを止めない。
ついにダグバの近くにまで迫ったブラックタイタン。
「でやあぁ!」
一撃、二撃、三撃とダグバに振り下ろされる黒い刀身。
渾身の攻撃は全てはじき返される。
それでも攻撃をやめない雄介。少しでも…少しでも時間を稼がねば…。
「でやあぁ!でやあぁ!でやあぁぁ!!」
ガキュイーン!
幾度目かの攻撃の後、すさまじい音を残して、黒いタイタンソードの切先が
砕けて地面に突き刺さる。
悠然とした動作でダグバはブラックタイタンの胸に手を伸ばす。
直感で危機を感じた雄介は、咄嗟に防御姿勢を取った直後、ダグバの手が
ブラックタイタンの肩に触れた。
「!?!」
声にならない悲鳴をあげる雄介。
ブラックタイタンのショルダーアーマーが、ダグバの手によって原型を留めぬ
ほどにドロドロに溶かされてしまう。
再び手を伸ばすダグバに渾身のパンチを当て、どうにか距離を取り、赤の金の
クウガとなった雄介。
だが、もう、打つ手が、無い。
「もうおしまい?つまんないなぁ…」
ダグバはクウガに背を向けると再び虐殺を開始する。
逃げ、隠れる人々を次々に炎の柱に変えてゆくダグバ。
…ついに辺りに動くものは無くなり、轟々と渦巻く炎の音だけが聞こえる。
ダグバは動かない。己の作った地獄とその音を楽しむかのように。
その時、無線から一条の声が響く。
「五代!こちらの住民の避難は完了した!そっちはどうなっている!」
「一条さん…、ここはもう…やつと俺だけです」
「街の中心は火勢と煙が強くて、ヘリでも近づけず援護に行けない!逃げろ
五代、体勢を立て直すんだ!…五代、返事をしろ五代!」
雄介はもう聞いていなかった。万全の体勢でやつを捕らえられる時には、それ
までに後何人の犠牲が出るか分からない。
「一条さん…。黒の金の力を使います。なるべく皆さんを遠くに避難させて
ください」
「!おい、待つんだ五代!返事をし…」
雄介は無線のスイッチを切り、静かに精神を集中させると、アークルから出た
放電が全身に走る。赤の金のクウガは、黒の金のクウガへと姿を変えていった。
黒の金のクウガの目が赤く光る。雨がその顔に降りかかってゆく。
マスクを伝う雫。それはクウガが泣いているようだった。
ダグバに狙いを定め、体勢を整える黒の金のクウガ。
雄介は決意を固めると、未だ動かないダグバに向かって走り出した。
黒いクウガの両足にアマダムからエネルギーが流れ込み、雄介の両足が熱くなる。
濡れたアスファルトを、赤い光を足から放ちながら雄介が走る――!
「ふンッ!」
空中で回転し、黒の金の力の全エネルギーを両足に集中させ、ダグバに蹴りこむ!
「うおぉぉぉりゃああああああああ!!」
(つづく)
>>>後編『覚悟』
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